はじめに
引き止め方を10個読んでも、その部下は残りません。
「部下 辞める」で検索すると、出てくるのは引き止め方と防止策です。
- 面談の頻度を上げる
- 退職の兆候を早めに察知する
- 心理的安全性を高める
- 1on1のツールを導入する
どれも間違ってはいません。ただ、書いている会社を見てください。
離職防止のシステムを売っている会社か、管理職研修を売っている会社です。
引き止めが正解でないと、商売にならない立場の人たちが書いています。
ただ、私は逆のことを書きます。
これまで通算100名を超える部下を預かってきました。
その中で辞めていったのは24人ほどです。そして、24人とも引き止めていません。
ただし、引き止めなかった理由は、正反対の2つです。
上司の仕事は、業績と育成です。
そして私は、気持ちよく送り出してあげるのも上司の役目だと思っています。
先に結論:判断は、この3つです

1⃣ そもそも、引き止めは効きません
期間限定なら止められます。ただし、永続的には無理です。
2⃣ 見るのは理由ではなく、主語です
自分の話をしているか、自分以外の話をしているか。
ここで、引き止めない理由が正反対になります。
3⃣ 手を打つのは、決断の「前の前」です
辞表を持ってきた時点では、もう終わっています。
勝負はその何か月も前についています。
100人以上を預かって、24人ほどが辞めていきました
最初に数字を出しておきます。
私は専門商社に15年いて、物流・営業・仕入・人事・総務を経験しました。
最終的には4つの部署・46人を見る立場になり、その前には転勤も経験しています。
立場が変わるたびに、部下が入れ替わるので、通算では100名を超えています。
その中で、辞めていったのは24人です。内訳はこうです。
他責で辞めた人が、20人ほど。自責で辞めた人が、4人。
そして24人とも、私は引き止めませんでした。迷ってもいません。
理由は単純です。誰の人生かを考えないと、いけないからです。
その人の時間は、その人のものです。私のものではありません。
正直に書くと、引き止める演技はしたことがあります。
社長から「彼を止めてくれ」と言われたことがあります。
立場上、断れません。なので、引き止める演技はしました。
ただ、本音は最初から決まっていました。悩まず行ってほしい。それだけです。笑
ここを正直に書いておかないと、きれいごとになってしまうので書いておきます。
役者として演じることと、本音は別です。
部下に辞めると言われたら、ショックを受けて当然です
判断の話に入る前に、先に書いておきたいことがあります。
冷静に送り出したように書きましたが、その日に何も感じなかったわけではありません。
一緒に数字を追った相手です。寂しいに決まっています。
ただ、そのショックは、あなたが手を抜いていなかった証拠です。
どうでもいい相手なら、何も感じません。だから、まずそこを否定しないでください。
感じたうえで、判断は別にやればいい。この記事の残りは、その判断の話です。
見るのは理由ではなく、主語です
辞めると言いに来た部下が、何を話すか。ここに全部出ます。
主語が「自分以外」の人
- 会社の話
- 上司の話
- 制度の話
- 評価の話
- あの人が、こう言った
以上のような話をします。
これは他責です。私が見てきた中では、20人ほどがこちらでした。
主語が「自分」の人
- 自分が何をやりたいか
- 何を試したいか
- どこまでやれるか見てみたい
以上のような話をします。
これは自責です。4人がこちらでした。
引き止めない理由が、正反対になります。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
私は24人とも引き止めませんでした。ただし、理由はまったく違います。
他責の20人を引き止めなかったのは、引き止めても行った先で同じことが起きるからです。
会社は変わっても、見ている方向が変わっていません。
留まらせても、同じ不満がここで続くだけです。
自責の4人を引き止めなかったのは、挑戦を止める理由がないからです。
こういう人は、行った先でもやります。止める側に、止めるだけの理由がありません。
同じ「引き止めない」でも、片方は諦めで、片方は送り出しです。
ここを一緒にしてはいけないと思っています。
ただし、辞表の日には分かりません。
辞めますと言いに来た日に、初めて見極めようとしても遅いです。
その日の言葉は、準備された言葉です。本音とは限りません。
分かるのは、それまでの関係づくりと、日々の会話の中です。
普段の雑談で、その人の主語がどちらを向いているか。
それを知っていれば、辞表の日には答えが出ています。
そもそも、引き止めは効きません
これは断言できます。
期間限定なら止められます。
- 給料を上げる
- 部署を変える
- 担当を外す
そういう手を打てば、数か月は残ります。でも永続的には無理です。
それよりも大きな問題は、引き止めて残った人がその後どうなるかです。
多くの場合、気持ちが離れたまま、席だけがそこにある状態になります。
本人は「あのとき出ておけば」と思いながら働き、周りもなんとなくそれを感じ取る。
それは本人にとっても、チームにとっても、いい状態ではありません。
なお、引き止められる側がどう受け止めているかは、私自身が辞めたときの話に書きました。
私も、止められる側を経験しました
私は送り出す側だけでなく、送り出される側も経験してます。
15年いた会社を辞めるとき、引き止めはありました。
内容は書けません。会社にも相手にも事情があります。
ただ、そのとき私が何を感じたかは書けます。
誰も、自分がなぜこの会社に必要かを、自分の言葉で語りませんでした。
一人でもビジョンを見せてくれていたら、私は変わっていました。
言われたのは、行くな、もったいない、考え直せ。そういう言葉でした。
もし一人でも、「こうしたいから、お前に残ってほしい」と言ってくれていたら。
その先に何をやりたくて、その中で私に何を託したいのか。
それを見せてくれていたら。私の気持ちは、変化したと思います。
引き止めるというのは、そういうことです。
行くなと言うことではなく、行かない理由を渡すことです。
ただし、止めた人は、その人の人生の責任を持てるのでしょうか?
これは、いま部下を止めようとしている人に、正直に聞きたいことです。
止めること自体はいいと思います。必要とされているのは、悪いことではありません。
ただ、本当に最後まで、辞めるはずだったその人の責任を持てるのでしょうか。
私は疑問に思います。
時間は誰にとっても有限です。止めた分だけ、その人の時間を使わせていることになります。
使わせた以上、その先を用意する責任があるはずです。
そして、ここで気づいたことがあります。
引き止められる人と、引き止められない人の差は
自分が必要な理由を言葉にできるかどうかです。
その理由は、社内にいるだけでは分かりません。
市場価値は、外に出て比べてみないと分からないからです。
20人については、私の力不足です
きれいに書くつもりはないので、正直に書きます。
他責で辞めていった20人に、私は気づきを与えることが、出来ませんでした。
おそらく次の場所に行っても、同じことが起きます。変わるのは、年齢だけです。
それが分かっていて、渡せませんでした。
気づきを渡そうとはしました。ただ、考え方の土台や意志が違うと、私にはそこまででした。
本音で、他人は変えられません。
できるのは、自分のやるべきことを正しくやって、影響の輪を広げることだけです。
それでも、届いた人がいたかもしれない。そこは、私の仕事が足りなかったところです。
上司の仕事は、業績と育成の2つです。育成には、働ける環境をつくることが含まれます。
環境は与えられるものではなく、つくるものです。その意味で、20人分は私の課題でした。
変える場所を間違えると、何度動いても同じところに戻ります。
そのことは、別の記事に書きました。
辞める前に手を打てるのは、「前の前」です
結論から言うと、辞めると言われた時点で、打てる手はほとんどありません。
辞めるという決断は、その日に生まれたものではないからです。
何か月も前から少しずつ固まって、最後に言葉になっただけです。
なので、決断する前の、その前くらいで手を打たないと無理です。
よく言われる「前兆」は、もう前兆ではありません。
- 有給が増えた
- 机が片付いた
- 飲み会に来なくなった
よく前兆として挙げられるものです。
あれは前兆ではありません。もう決まった後の、準備の動きです。
そこで気づいても、打てる手はありません。
本当の前兆は、もっと地味です。報連相が減ることです。
ここで多くの上司は「あいつは報連相ができない」と考えます。
私は逆に考えていました。来なくなったのは、来てもらえなくしているからです。
なぜそう考えるようになったのかは、報連相そのものを扱った記事に書きました。
上下があると思った時点で、それはもう報連相ではありません。
あなたの状況別の答え
■すでに辞表を持ってこられた
引き止めなくていいです。
そこで使うべき力は、引き止めではなく、関係を残すことに使ってください。
■まだ辞めるとは言われていないが、様子がおかしい
ここが「前の前」です。いま打てば間に合います。
やることは面談を増やすことではありません。
自分が報連相しやすい人間になっているかを確認することです。
■上から「引き止めろ」と言われている
演じてください。それも仕事のうちです。私もやりました。
ただし本音は、自分の中で分けておいてください。
役者として正解を言うことと、あなたがその人にどうなってほしいかは、別の話です。
■辞められると自分の評価が下がるのが怖い
正直な悩みだと思います。
ただ、そこで止めるなら、それはその人のためではなく、自分のためです。
それを自覚したうえでやるかどうかで、結果が変わります。
よくあるQ
Q1. 引き止めて残ってくれたら、成功では?
短期的にはそうです。ただ期間限定です。
そして残った人は、気持ちが離れたまま席にいることが多いです。
Q2. 送り出したら、チームの穴はどうするのですか?
穴は空きます。それは事実です。ただ完璧な準備も、完璧な引継ぎも存在しません。
役職も担当も預かりものです。渡した後は、次の人の生き方になります。
Q3. 他責の部下でも、気づかせる方法はありますか?
私は20人分、うまくいきませんでした。方法があるとしたら、辞めると言われる前です。
日々の会話で、主語を自分に戻す問いを投げ続けるくらいだと思います。
Q4. 辞める理由を言ってくれません。
言えない相手だと思われている、ということです。それ自体が答えです。
無理に聞き出すより、最後まで気持ちよく送り出すことに切り替えてください。
関係が残れば、何年か後に本当の理由を聞ける日が来ます。
Q5. 部下の退職が続いて、自分が管理職に向いていない気がします。
役職を降りることは、無責任ではありません。
できないと分かったのに放置される方が、よほど無責任です。
ただ、降りた後に差がつくのは理由ではなく、自分で決めたかどうかでした。
まとめ:今から出来ること
- 部下の話を聞くとき、主語がどちらを向いているかだけ意識する。
自分の話か、自分以外の話か。
それだけで、引き止めるかどうかではなく、どう送り出すかが決まります。
- 報連相が減っていないか、直近1か月を思い返す。
有給や飲み会より、こちらが本当の前兆です。
- 辞めると言われたら、引き止めではなく関係を残すことに力を使う。
答え合わせは、辞めた後の関係に出ます。
- ショックを受けている自分を、否定しない。
何も感じないなら、それこそ問題です。
- 自分がこの会社にいる理由を、一度言葉にしてみる。
言葉にできない人は、部下も引き止められません。
注意(必ず読んでください)
ここに書いたのは、私が送り出す側と、送り出される側の両方を経験した中での考えです。
会社の規模、業界、チームの状況によって、正解は変わります。
また、部下の退職が続いて眠れない、食欲がないなど
心身に不調が出ている場合は、この記事の内容は当てはまりません。
まず休むこと、そして、医師や専門機関に相談することを優先してください。
最後に決めるのは、あなたです。
あなたの人生を、あなた以上に大切にできる人はいません。
さいごに
24人が辞めていきました。引き止めなかったことを、後悔したことは一度もありません。
ただ、もっと前に手を打てたのではないかと思ったことは、何度もあります。
特に、他責で辞めていった20人については、今でもそう思います。
その反省が、この記事です。
部下を引き止められるのは、自分がこの会社にいる理由を言葉にできる人だけだと思っています。
私自身、転職活動をして初めて、自分が何で評価されているのかが分かりました。
中途採用は、これまでのキャリアの答え合わせです。
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仕組みを先に読んでおいてください。
ここが、あなたの人生で運を掴みにいく、最初のきっかけになれば幸いです。
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