はじめに
いくら出すかを決めていた側が書いた記事が、ほぼありません。
「転職 年収交渉」で検索してみてください。
出てくるのは、こういう記事です。
- 年収交渉のベストなタイミング
- 成功する伝え方
- 交渉メールの例文
書いているのは、転職エージェントと、求人媒体です。
交渉のやり方を、候補者の側に立って教えてくれます。
私は、反対側にいました。
専門商社で中途採用の面接官をやっていて、合否を決めていました。そして、いくら出すかも決めていました。
だから、先に正直に書きます。
規則のある企業ほど年収は、交渉ではほとんど動きません。
先に結論:確認するのは3つ
① 金額は、制度で計算されています
② 交渉で動く幅より、場所を変えて動く幅のほうが大きいです
③ 自分の価値は、市場に出してみないと分かりません
順番に書きます。
金額は、制度で計算されています
まず、仕組みから書きます。
私は金額を決める立場にいましたが、感覚で決めていたわけではありません。
人事制度によって、計算します。
だから、地域によって採用基準がブレることはありません。人によってブレることもありません。
そういう仕組みになっています。
年齢でも変わりません。私は20代から50代まで面接してきましたが、どの年代であっても、当てはめる制度は同じでした。
ここが、交渉記事に書かれていないところです。
候補者の側から見ると、目の前の面接官が金額を決めているように見えます。実際、私が決めていました。
ですが、私が決めていたのは「制度に当てはめた結果」です。
気に入ったから上げる、粘られたから上げる、という余地は、そもそも設計されていません。
もちろん、会社によって制度は違います。制度が緩い会社もあると思います。
ただ、制度を持っている会社に対して、伝え方やメールの例文で金額を動かそうとするのは、かなり分の悪い勝負です。
交渉より、場所で動く幅が大きい
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
交渉で動かせる幅は、制度の中にあります。
ですが、会社を変えると、制度そのものが変わります。
同じ経験、同じ年齢、同じ実績でも、どの会社の制度に当てはめるかで、出てくる数字が変わります。
だから、順番はこうなります。
交渉のやり方を調べるより先に、自分がどの制度に当てはめられるかを見る。
そして、それは自分では分かりません。社内の制度しか知らないからです。
社外の人に、自分の経歴を見てもらってください。
管理職・専門職として実績がある方、年収600万円以上の方は
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社内で差がつくのは一箇所だけ
制度で決まる、と書きました。
では、私に裁量はまったくなかったのか? いえ、ひとつだけありました。
役職の付与です。
私は役職をつける権利を持っていました。給与に差が出るとすれば、その付与額の分だけです。
つまり、社内で年収を上げる方法は、交渉ではありません。役職がつくかどうかです。
そして役職は、頼んでつくものではありません。
ここは、転職を考えていない方にも同じことが言えます。
上司に年収の相談をする前に、役職がつく状態にあるかどうかも考えたほうが、いいと思います。
交渉されたとき、私が返したこと
実際に、年収交渉をされたことがあります。
そのとき私が返したのは、金額の話ではありませんでした。
人生を、静止画ではなく動画で見てください、という話をしました。
いまの提示額は、静止画です。その一枚だけを見ると、高いか低いかしかありません。
ですが、動画で見れば、いまは通過点です。
仕事で成果を出せば、仕事が与えられます。仕事が与えられれば、役職がつきます。役職がつけば、給与は自ずと上がります。
この順番は、変えられません。
金額を先に取りに行っても、その順番が飛ぶことはないのです。
冷たく聞こえるかもしれませんが、制度で計算される以上、私が個人的に上乗せすることはできません。
できるのは、この順番を伝えることだけでした。
考え方については、別の記事に詳しく書いています。
私は、交渉していません
ここは、正直に書きます。
私自身が転職したとき、年収交渉はしていません。
理由は単純です。提示された額が、そのときの年収より10%以上高かったからです。
しかも、休日も増える形でした。
交渉する理由が、どこにもありませんでした。
もう少し正確に書きます。
私は5社を受けて、3社から内定をいただきました。
そのうち一番低かった提示でも、当時の年収より10%以上、上でした。
一番高かった会社ではありません。一番低かった会社の提示が。です。
これは、私が交渉上手だったからではありません。逆です。
交渉を一度もしていないのに、最低でも10%以上動きました。
動いたのは、私の話し方ではなく、当てはめられた制度が変わったからです。
だから、こう思っています。
自分の価値は、市場に出してみないと分かりません。
社内にいるあいだは、社内の制度で計算された数字しか見えません。それが高いのか安いのかは、外に出して初めて分かります。
そして、3社とも10%以上だったということは、私が特別な1社に当たったのではありません。
市場のほうが、私を10%以上高く見ていた、ということです。
裏を返せば、15年いた会社に、10%以上安く雇われていました。
笑い話のようですが、笑えません。制度が悪いのでもありません。
社内の制度で計算された数字を、外に出して確かめてこなかった私の問題です。
あなたの状況別の答え
いま、内定が出ていて交渉するか迷っている方へ。
まず、提示額が現年収より上か下かを見てください。上なら、交渉の前に、その差がどこから来ているかを考えてみてください。
制度が変わったから出ている差であれば、それ以上は動きにくいです。
これから転職活動を始める方へ。
交渉の勉強は、後回しで構いません。先にやるのは、自分がどの年収帯の求人を提示されるかを見ることです。
そこが分かれば、交渉する必要があるかどうかも分かります。
いまの会社で年収を上げたい方へ。
交渉ではなく、役職です。そして役職は頼んでつくものではありません。
成果が先で、仕事が与えられて、その次です。順番を飛ばすことはできません。
提示額に納得できず、断ろうか迷っている方へ。
断っていいと思います。ただ、断る前に、その額がその会社の制度による計算結果なのか、単に低く見られているのかを確かめてください。
エージェント経由なら、そこは聞けます。
よくあるQ
Q. 年収交渉をすると、印象が悪くなりますか。
私が交渉された側だったときは、金額ではなく考え方を返していました。
印象の良し悪しより、制度がある以上ほとんど動かない、というのが実際のところです。
Q. 交渉はいつするのが正解ですか。
タイミングの話をする前に、動く余地があるかどうかを確かめたほうが早いです。制度で計算されている会社なら、いつ言っても同じです。
Q. エージェントに交渉を任せてもいいですか。
任せたほうがいいと思います。
自分で言うより角が立ちませんし、その会社の制度にどれくらい幅があるかは、エージェントのほうが知っています。
Q. 提示額が低かったら、その会社はやめるべきですか。
金額だけで決める必要はありません。私の場合は、年収が上がったうえに休日も増えました。条件は年収だけではありません。
Q. 自分の適正年収は、どうやって知りますか。
社外の求人を見るのが一番早いです。届いた求人の年収帯が、いまのあなたの位置です。
まとめ:今から出来ること
年収交渉は、やり方の問題として語られています。
- 金額は、制度で計算されている
- だから、伝え方やメール例文では動きにくい
- 社内で差がつくのは、役職の付与だけ
- 交渉で動く幅より、場所を変えて動く幅のほうが大きい
- 私は3社とも、一番低い提示で10%以上だった
- 自分の価値は、市場に出してみないと分からない
今日できることは、ひとつです。
交渉の準備より先に、自分にどの年収帯の求人が届くかを見てください。
JACリクルートメント私は交渉を一度もせずに、3社とも10%以上でした。動かしたのは、話し方ではなく場所です。
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注意(必ず読んでください)
ここまで書いたことは、すべて私一人の経験です。
制度は会社ごとに違います。交渉の余地が大きい会社も、実際にあると思います。私が見ていたのは、私がいた会社の制度だけです。
また、私が転職したのは当時36歳のときで、業界を変えています(職種は、はじめは同じ営業でした)。
10%以上上がったのは私の事例であって、誰でもそうなるとは限りません。下がる場合もあります。
そして、いちばん大事なことを書きます。
受けるか断るかは、最終的にあなたが判断してください。
私の言葉で動いて、うまくいかなかったとき、あなたの人生の責任を私は取れません。
自分の人生の大きな決断の主語は、いつでも自分です。
さいごに
年収交渉のやり方を調べている時間は、悪いものではありません。真剣に考えている証拠です。
ただ、金額を決めていた側から言えることがあります。
その交渉で動く幅は、たぶんあなたが思っているより小さいです。
そして、場所を変えたときに動く幅は、たぶんあなたが思っているより大きいです。
私は交渉をしていません。それでも、受けた3社すべてが10%以上でした。一番低い提示で、です。
自分の価値は、市場に出してみないと分かりません。
ここが、あなたの人生で運を掴みにいく、最初のきっかけになれば幸いです。
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